$shibayu36->blog;

クラスター株式会社のソフトウェアエンジニアです。エンジニアリングや読書などについて書いています。

人事の仕事の全容を知る - 「人事管理入門」読んだ

評価制度などの仕組みを考えるにあたり、一度人事関連の教科書を読んで全容を知らないといけないなと思ったので、おすすめされていた「人事管理入門」を読んだ。

とにかく面白く、教科書的に体系的にまとめられているのに関わらず分かりやすく、読んで非常に参考になった。この本を読むと、人事とはどういう役割なのか、グレード制度とは何か、人事評価とはどういう目的で行われるのかなど、人事にまつわる知識が体系的に身につけられる。そのため、人事部に所属している人にはとにかくおすすめだし、人事に関わってなくとも組織に興味があるならおすすめ。人事に関わる制度を考えるときには何度も読み返したい本だなと思った。


今の自分だと、「第1章 人事管理のとらえ方」「第2章 戦略・組織と人事管理」「第3章 社員区分制度と社員格付け制度」「第6章 教育訓練」「第7章: 人事評価」あたりが特に面白かった。このあたりを読んで、

  • 人事の役割とは何か
  • どうして社員を区分する必要があるのか
  • 色んな会社に導入されているミッショングレード制とはどのような背景から生まれ、どのようなものなのか
  • 社内で教育を行っていくためには、どのようなことを考えておく必要があるか
  • 評価は何のために行われるのか。自社にとって有効に働かせるためには、どの要素を考える必要があるか。
    • もちろん評価制度は報酬を決めるためだけに行われるわけではない

などといった知識を得ることが出来た。これまでの会社の仕組みで、「なぜこうなっているか分からない」と思っていたところの背景が知ることが出来たので、今後は単なる感想を超えて意見を言えそうだなと思う。


この本では学ぶことが多すぎて、ここが面白かったというのをまとめられないのだけど、特に印象に残った文章がある。

高付加価値型の製品・サービスは「ヒト」の知恵と工夫の産物なので、いかに優秀な人材を確保し有効に活用できるかが競争力の源泉

これを見て、やはり高付加価値型のサービスを提供していると言えるインターネット業界にとって一番重要なのは人であり、この業界で成果を上げるには、優秀な人にやりがいを感じ続けてもらい、自己成長を続けてもらい、相応の評価をし続けてもらうことが必要だなと再認識できた。このために制度設計をし、それを現在の状況に合うために改善し続けなければならないと思った。

読書ノート

## 第1章 人事管理のとらえ方
人事とは、について概論がここだけで分かる。全体的に非常に勉強になる章なので何度も読み返したい。

- 高付加価値型の製品・サービスは「ヒト」の知恵と工夫の産物なので、いかに優秀な人材を確保し有効に活用できるかが競争力の源泉 1 ※
    - 一方、高付加価値型の場合、市場の不確実性(市場リスク)も高い
    - また、高付加型の開発を担う高度な専門能力をもつ人材ほど、外から「必要なときに必要なだけ」確保することが難しい
    - そのため、企業は長期的な視点に立って人材を確保し、育成し、活用することが重要
- これからの人事管理は、増大する市場リスクへの対応と、より大きな付加価値を創り出す人材の確保と活用という、トレード・オフの関係にある短期と長期の課題を同時に解決することが求められる 2
- 企業は利益を上げるという経営目標を実現するために、外部からヒト、モノ、カネ、情報の資源を調達し、それらを内部で製品やサービスに変換し、外部に提供する 3
    - 企業はこうした活動を効果的・効率的に行うために、組織と管理の仕組みを構築する
    - 組織は細分化され分業構造になり、それぞれの部門は、外(企業外や別部署)から資源をインプットとして受け入れ、それを事前に決められたアウトプットに変換し、外へ提供するという変換機構としての役割をもち、このインプットとアウトプットを通して、部門は相互に有機的に関連付けられている
    - 管理システムは、インプットをアウトプットに変換し提供する活動を効率的・効果的に行われるように管理する機能をもつ
- 人事管理の基本的な役割は、組織あるいは部門が行う「ヒトを調達する」「ヒトを活用する」経営活動が、「組織あるいは部門の目標」を達成する方向に向かって効果的に行われるように、また、それが少ない費用で効率的に行われるように管理すること 4
- 人事管理の2つの目標 4 ※
    - 効果的なヒトの調達と活用によって、組織あるいは部門の「いま」の生産性の向上をはかること。短期の目標
    - 変化の激しい市場のなかで企業が成長し存続するためには、変化への対応力をもつこと、つまり「有能な人材」を内部に蓄積しておくことが不可欠である。人材面のインフラを整備することであり、それが人事管理の長期の目標
        - 「有能な人材」とは、(1)業務に関連する高度な知識、能力を持つ、(2)労働意欲や会社に対するコミットメントが高い
- 人事管理を機能の面から分解すると 5 ※
    - 1. 人材を確保し(外部からなら採用、内部からなら教育)、仕事に配置する機能 -> 雇用管理
    - 2. 人材が能力を発揮できる就業の条件を整備する機能 -> 就業条件管理
    - 3. 働きに対する報酬を決め、社員の労働意欲の維持・向上をはかる機能 -> 報酬管理
    - 加えて、社員の働きぶりを評価する「人事評価の管理」も重要
- 人事評価は、働きぶりを評価し、その結果を採用、配置、教育訓練、報酬決定などのすべての人事管理にフィードバックをすることが基本的な役割 5
    - 報酬を決めるための管理活動だけではない
    - 配置が適切であるかを評価して次の配置に反映する、仕事と能力が合っているかを評価してつぎの教育訓練に反映する
- 人事管理の構成図 6 ※
    - 社外から採用される(4章) -> 仕事に配置される(5章) -> 仕事に必要な教育を受ける(6章) -> 働く条件が整備される(11章) -> 生活と調和した働き方が整備される(12章) -> 働きぶりが評価される(7章) -> 昇進する(8章) -> 賃金などの報酬を得る(9章・10章) -> 退職する(13章)
- 人事管理の環境条件 7 ※
    - 人事管理を考えるときに何を変数とするか
    - 企業内の環境条件は、経営戦略・組織・業績管理システム、社員の働く意識、労使関係
        - 経営戦略・組織・業績管理システムは部門、職場、個人に対して「何の仕事をしてほしいのか」「その仕事で何の成果を出してほしいのか」 -> これはどんな人材を採用するのかに影響する
        - 社員がどんなことをしたいのかも重要
- 人事管理のサブ・システムの関連性 8 ※
    - 社員区分制度と社員格付け制度が基本システムとしてあり、人事評価があり、それぞれのサブシステムに繋がる
    - 人事管理の骨格は設計思想に規定される
    - たとえば、「社員の生活の安定を第一に考えよう」という人事管理の設計思想をとれば、一家の世帯主を中核的な社員として位置づけて採用と配置を決め、報酬は彼らの生計費の変化を考えて年齢を重視して決めるという人事管理が形成される
    - こうした設計思想の人事管理への影響はまず、人事管理の基盤を形成する基本システムに表れる 9

## 第2章 戦略・組織と人事管理
業績評価と人事評価を分けて考えて、組み合わせないといけないというのが面白い章。

- 仕事の結果の評価である業績評価と、「ヒト」の評価である人事評価は明確に分けて考える必要がある。業績評価を人事評価にどのように結びつけるか(どの程度賃金に反映させるかなど)は多様な選択肢がある。考慮されるべき点は、長期的な視点からみた労働意欲の維持・向上と人材育成への配慮 24 ※
    - 短期的な意味合いが強い業績評価の人事管理への反映は「いま」の労働意欲を刺激するかもしれないが、そのことは、長期的な観点に立った労働意欲の維持・向上と人材育成とは必ずしも両立しない
- 個人の仕事のプロセスの中で、個人がどう働くかは組織と業績管理で決まる。組織によって個人がどのような仕事を担当するのか(期待役割)が決まり、業績管理によって仕事を通してどのような成果を上げることが期待されているのか(期待成果)が決まるからである 25
    - つまり、組織と業績管理は、働き方を誘導する役割を持つ
- 経営戦略・組織・業績管理と人事管理の関連構造 26 ※
    - 仕事のプロセスや経営と、人事のプロセスがどう絡み合っているかが図式されている
    - 経営戦略、組織、業績管理は期待役割と期待成果を決め、会社はそれらを通して社員に期待する仕事の内容を提示する。社員は、このようにして会社から提示された仕事に対して能力と労働意欲を投入して成果を上げる。人事管理はこの仕事のプロセスに「適切な」人材を「適正に」供給し、彼らに期待役割を果たし、期待成果を実現するように働いてもらうという役割を担っている。この人事管理の役割は、雇用管理、報酬管理、評価の3つがある 38
- 同じ評価機能をもつとはいえ、「人事管理の管理サイクル」に組み込まれた人事評価と、「仕事の管理の管理サイクル」に組み込まれた業績評価とは異なる機能を果たしていること、両者の連結は労働意欲の向上や人材育成といった長期的な視点に立って実現すべきこととの関連で考えられなければならない

## 第3章 社員区分制度と社員格付け制度
グレード制度(役割等級制度)がどういう背景から作られてきたか分かる。

- 人事管理は次の二つの土台の上に形成される 45 ※
    - 社員区分制度: 人材を効率的・効果的に育成・確保し、活用し、処遇するために多様な社員をいくつかのグループに分ける仕組み
    - 社員格付制度: 社内の社内序列を決める仕組み
- 区分の細かさの影響 46
    - 細かくするほど、社員の多様性や仕事特性に適合する人事管理の体型を作れる
    - 細かくするほど、異なる人事管理が適用されている社員間の均衡(公平性)をはかることが難しくなる。職の給与の決め方など
    - 細かくするほど、社員の流動性は阻害され、「他の区分の社員とわれわれは違う」という意識が強まることから、社員間の意思疎通と協調性が阻害され、組織全体の生産性が低下するおそれがある
- 区分のタイプ 47
    - 職種による区分
    - キャリア形成に対する企業の期待の違いによる区分(ホワイトカラー・ブルーカラー)
    - キャリア段階の違い、つまり社員の育成と活用の観点から社員を区分 -> グレードとかもこれ
        - 能力養成期なら成果より能力向上を重視して評価、能力発揮期なら成果を重視して評価とか
    - 期待する働き方の違いによる基準(正社員、パートなど)
- 社員格付制度の構成 49 ※
    - 人間系(長期の労働意欲、潜在能力)、仕事系(発揮された能力、仕事)、市場系(成果)
    - 何を評価基準として重視するかによって、社員格付制度の類型が決まる
- 成果主義制度は、成果が短期に変動する性格をもち長期的な観点から「偉さ」を決める基準になりにくく、社員格付制度として機能することは難しい 49
- 人材余剰のリスクへ対応する市場調整力と市場開発力
    - 市場調整力: 需要の変動に合わせて人材の供給を柔軟に調整する
    - 市場開発力: 人材余剰が発生しても、それを吸収できるだけの新しい仕事を開発する
- 人間系を重視した職能資格制度の利点 60
    - 働き方の異なる社員を共通の基準で評価するので、人事管理の公平性が強化され、「多様な社員が協力し合う」集団主義の利益を期待できる
    - 仕事と処遇が分離されているので、人材を流動して配置しやすい
    - 能力を上げれば給料が上がるという、個人の能力開発努力を誘引する協力なインセンティブ機構
- 職能資格制度や職務分類制度の課題からできた役割等級制度(ミッショングレード制) 61
    - 職務を大括りにして役割と呼称し、その役割が果たすべき内容がミッションとして明記されている
- 日本と欧米企業の人事管理のあり方の違いによる影響 64 ※
     - 日本は単一化された社員区分制度と人間系重視の社員格付けをとっていた
         - 社員間の協調性、人材配置の柔軟性、高い労働意欲をもった能力開発に熱心な社員の確保に優位性
         - 反面、企業にとって重要な人材、部門、職種を優遇することが難しい。資格や賃金が仕事から離れた形で決定されすぎる
     - 欧米企業の仕事系の制度
         - 賃金を仕事とリンクして決めることができ、企業に対する貢献に見合って報酬を決めやすい
         - ブルーカラーとホワイトカラーで区分していたためその協調が難しかった、仕事の配分の変更の難しさ、社員の能力開発の促進の難しさ
- 第一三共の役割等級制度 69
    - グレード制の例が分かってよかった
    - 役割定義書が参考になる

## 第4章 採用管理
- 採用方法の分類 81
    - 欠員補充による採用と、採用計画に基づく計画採用
    - 即戦力か、能力開発を予定するか
    - 採用の時期
    - 本社で一括か各事業部ごとか

## 第5章 配置と異動の管理
- 双方調整型の配置・異動の仕組み 96
    - 社員と会社の両方の希望を考慮する
    - 自己申告制度や社内公募制度
    - 社内公募制度を積極的に活用すると企業内部に擬似的な労働市場が構築される
- 異動の理由と目的 98 ※
    - 適正発見の機会提供、よりレベルの高い仕事を経験させ能力の伸長をはかること、仕事の経験の幅を広げ能力の幅を広げること、同一職能内の部門間や異なる職能間の人的交流を行うこと、企業内の部門などの統廃合など要員のアンバランスの解消や再配置をはかるなど
- 自己申告制度の導入目的 102
    - 社員の希望を適切に把握し、希望を活かすことで、意欲をもって仕事に取り組んでもらう
    - 自己申告書に記入することが適性やキャリアについて考えることになる
    - 自己申告書に基づいて面談が実施されると、上司と部下の間のコミュニケーションが円滑化される
    - 一方運用次第では、上司との面談の場合本音を記入しづらい、希望が実現しないことが何度も起こると社員が意欲を低下させるということがある
- 社員公募制度 103
    - 担当する業務内容をあらかじめ明示し、その業務に従事したい社員を社内から広く募集する制度(社内転職システム)
    - 類似したものは社内ベンチャー制度: 新しい事業計画を社員から募集し、それが採用された場合、提案者自身に事業展開を任せる
    - 運用上の留意点: 自由に応募できる必要、応募情報の秘密保持の配慮、制度に対する管理職の理解を求める、公募の選にもれた社員に対するフォロー

## 第6章 教育訓練
- 付加価値の高い製品・サービスが人間の知恵と工夫の集積である以上、その成功は社員を有能な人材集団にいかに作り上げるかにかかっている 110 ※
- 市場が変わり技術が変わるという不確実性な状況の中で、人材育成するシステムを設計することは難しい課題 110
- 「優秀な人材」とは、明確に定義された特定の目的を追求している機能的な組織(「場」と呼称)のなかで、「場の目的にどの程度貢献しているか」という基準をもって人を評価した表現 111
    - 「優秀な人材とは何か」の問は、企業という「場」の目的とそれから派生する評価基準さえ分かれば解ける
- 「場」の変化に対応するためには 112
    - できる限り「不透明なトレンド」を正確に予測し、事前に対応しておくことが大切である
    - 企業の事業分野や担当の仕事がどのように変化しても、それに対応できる能力を身に付けておくこと
        - 人材育成の目標として強調される「変化に柔軟に対応できる人材であること」「ひとつの深い専門分野に加えて、周辺分野の能力を広くもった人材であること」は、将来の多様な事態にたいおうできる能力を身に付けることを意味している
- 仕事のプロセスから見る社員の4つの必要な能力 113 ※
    - 1. 組織の共通の目標を理解し、自分で行う課題を設定できる課題設定能力
    - 2. その課題を達成するための専門的な職務遂行能力
    - 3. 他の人と協力して課題を達成するための対人能力
    - 4. 課題達成の際に起こる問題を克服する問題解決能力
    - 現状の評価項目間違ってなさそうに思った
- 「人材需要」と「既存人材の構成」のギャップが人材ニーズであり、これを充足するには、3つの方法がある 114
    - 1. ニーズが生じた業務を外部に任せるのか(外部人材の活用)
    - 2. ニーズに見合った能力をもつ人材を社内あるいは社外から調達するのか(配置転換と採用)
    - 3. 社内の既存人材の能力構成を調整するのか(人材育成)
- 人材調達と育成の仕組みの図 115 ※
- 教育訓練は、「いつ必要とする能力か(ニーズの時間軸)」「計画したときに想定した能力ニーズが変化してしまう可能性(不確実性)」の二つの軸から、短期需要充足型、戦略投資型、人材ストック保全型の3つのタイプに分かれる 117
- 教育訓練費用は「直接費用」と、訓練に参加する労働者が訓練期間中に仕事から外れることから生じる「機会費用」から構成される 117
- OJTの進め方 123
    - 上司は部下が業務上どのような能力を必要とし、どのような特性と関心をもっているかを把握し、それに基づいて育成目標を立てる
    - 育成を考えてより難しい仕事、より多様な仕事、より権限の大きい仕事を部下に与えること、日常業務のなかで気がついたときにその都度指導することが重要
- Off-JTの利点 126
    - 特定の階層、職種、部門に共通する知識や技能を多くの人に同時に教育することができる
    - 社内外の専門家から、日常業務の中では習得できない知識や情報を得ることができる
    - 部門を越えて同じ入社年、職種、あるいは職位などの社員が集まり、情報や経験を交換し交流を深める機会であり、そこで形成された人間関係が仕事で役立つことが多い
- トヨタ: 「モノづくりは人づくり―優れたモノづくりを継承・発展させていくためには人づくりが不可欠である」と理念を掲げ、人づくりを「価値観の伝承」「ものの見方を伝えること」ととらえている 129
- 経営人材を育成し確保する環境を「計画的に」整備していかねばならない状況になっている 133

## 第7章: 人事評価
- 経営者から新しい人事評価制度を設計するように指示されたら、まず「どのような経営理念と経営目標をもち、それを実現するために社員に何を求めるのか」について、経営者としてのビジョンを聞くことを勧めたい 137
- 評価の最も大切なことは、評価者が評価される人に「何を期待しているのか」、したがって「何のために、何を評価するのか」を明示し、正確に伝えること 137
- 人事評価とは、「社員のいまの状態(能力、働きぶり)を評価し、その結果を人事管理に反映させるための管理活動」 138 ※
    - 3つの機能がある
    - 1. 社員のいまの状態を「知り評価する機能」
    - 2. 人事管理に反映する機能: 得た情報に基づいて、次の人事管理につなげる、つまり人材をより適切に配置する、人材をより有効に活用する、より構成に処遇するなどの人事管理上の目的を実現する
    - 3. 「社員の行動を変える」機能: 会社あるいは評価者が「こうなってほしい」と期待を示す・評価することで社員の行動を変える
- 人事評価の管理システム図 140 ※
    - めちゃくちゃ参考になる
    - 知り評価する機能や人事管理に反映する機能のための原則について書かれている
    - 知り評価する機能の原則
        - 「何を評価するのか」評価基準の原則: 1.求める人材像の設定、2.合理性の原則と加点主義
        - 「いかに評価するのか」評価方法の原則: 1.評価測定に関する原則(公平性と客観性)、2.評価手続きに関する原則(透明性)
    - 人事管理に反映する機能の原則
        - 「何のために評価するか」活用の原則: 能力開発のためか、配置のためか、処遇のためかなどの基本方針
- 業務遂行プロセスと評価要素と評価制度の関連性 143 ※
    - 潜在能力 -> 能力評価、労働意欲 -> 情意評価、職務行動 -> コンピテンシー評価、仕事 -> 職務評価、成果 -> 成果評価
    - どの要素で評価するかによって期待される効果が異なる。いまの結果を重視するならアウトプット要素を、能力やモチベーションを高めることを重視するならインプット要素を大切にすると良い
    - 評価要素によって評価結果の安定性が異なる。市場の影響を受けやすい成果評価は最も不安定
- 成果のみを評価要素とするのは長期的な観点に立って適切な人事管理を構築するには望ましくない 145
    - 評価が不安定になるので、たまたま成果が出にくい仕事に配置されると不公正な状態が生まれる
    - 短期に成果を出そうとしすぎると、変化に適応する能力が育たない
    - 成果のみをみていたのでは成果は上がらない。とくに配置と能力開発の「いまの状況」を正確に把握することができない
- 成果のみ能力のみと極端にならず、個々の評価要素がもつ特性を考慮したうえで、評価の目的に合わせて複数の要素の最適な組み合わせを考えると良い 146 ※
- 人材活用を効率的かつ効果的に行うために、社員を異なる人事管理が適用される複数のグループに分ける仕組みが社員区分制度であるので、評価区分は社員区分制度を踏まえて設定される 148
- 人事評価の代表的なエラー 149
- 配置と部下育成のためには、能力評価の結果が重要な情報源になる。昇進・昇格と昇給・賞与の処遇を決定するためには、1. 賞与には短期的な特徴を持つ成果評価や情意評価から、2. 昇進・昇格・昇給は長期的な視野から成果評価などとともに長期評価の能力評価の結果が強く反映される 151
- 目標管理の基本的考え方は、「組織目標と個人目標を統合して目標を決定し、個人はそれにむかって自立的に仕事を進める」点にある 151 ※
    - 留意点 : 1.部門の方針・目標・計画に結びついていること、2.担当業務の中の重要な目標に絞ること、3.目標はなるべく定量化すること
    - 目標管理の手順
        - 期初: 「目標の設定」の段階: 部下の業務目標の自己申告 -> 上司と部下の面談による調整 -> 業務目標の設定
        - 期中: 「目標の改定」の段階 <- 経営目標、市場環境の大きな変化
        - 期末: 「成果の評価」の段階: 部下の自己評価、上司と部下の面談による調整、最終評価の決定
- 本人の能力からみて難しい目標を達成した場合と、簡単な目標を達成した場合では成果が違うので、難しい目標を達成したときには高く評価する仕組みにしておく必要ある 153 ※
    - この点なるほどという感じ
- 人事管理の基本的な役割は、能力・適正と仕事・役割と給与・処遇の三者の均衡をとること、つまりより高い能力をもつ従業員がより高度な仕事に従事し、より高い処遇を得るという関係を実現すること 156 ※

## 第8章: 昇進管理
- 人事管理における昇進は役職昇進よりもその内容は広く、通常、役職だけでなく、職務や職能資格などが、下位の等級から上位の等級へ移動することを意味する 160
- 専門職制度が円滑に機能するための仕組みの整備 175
    - 1. 専門職の役割と職務要件の明確化
    - 2. 専門職の能力評価尺度を職能分野ごとに変える
    - 3. 入社後一定年齢までは複数の職能分野を経験する機会があり、ライン管理者か専門性を活かすかを決定できるようにする
    - 4. 専門職の類型化。たとえば純粋専門職とマルチ専門職など
    - 5. 管理職と専門職は、それぞれに期待されるマネジメント能力は異なるが、専門職だからといってそれがなくてよいわけではない

## 第9章: 報酬管理
- 一人の社員を雇用すると、毎月決まって支払う所定内給与の2倍弱の労働費用がかかる 189
- 賃金管理の目的は、賃金コストを適正に維持しつつ、1.必要の社員の確保、2.社員の労働意欲の向上と有効活用、3.労使関係の安定を実現すること 193
- 基本給にない賞与・一時金の機能: 1.成果配分・利益配分としての性格から、経営状況に合わせて賞与・一時金原資を決めることが出来る 2.個人に対する短期的な報酬という性格から、成果に合わせた個人別配分ができる

## 第10章: 福利厚生と退職給付

## 第11章: 労働時間と金部場所

## 第12章: 企業の人材活用とワーク・ライフ・バランス支援

## 第13章: 雇用調整と退職の管理

## 第14章 パート社員や外部人材の活用
- 外部化が可能な業務の条件: 社内にノウハウを蓄積する必要がない、企業情報の社外流出の問題がない、他の社内業務から分離して処理が可能である、必要なノウハウなどを有する外注先が外部に安定的に存在すること、仕事の成果が測定可能な業務であること、内部で処理するよりもコスト面で割高でないこと、正社員の技能形成にとって必要のない業務であること 308
- 外部人材の活用にともなう影響 325
    - プラスの影響: 正社員が高度な仕事に専念できる、正社員の労働時間が短くなる、製品・サービスの質が向上する、外部から新たなノウハウを導入することができる、自社でできない業務ができるようになる
    - マイナスの影響: ノウハウの蓄積・伝承が難しい、機密事項が漏洩する危険がある、非正社員の教育訓練にさく時間が増え正社員が本来の仕事に専念できない、正社員の新人を初めから高度な業務につけることになるため新人の育成が難しい、仕事上の連携が円滑に進まない