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クラスター株式会社のソフトウェアエンジニアです。エンジニアリングや読書などについて書いています。

「1分間顧客サービス」を読んだ

「1分間顧客サービス」を読んだ。これで1分間マネジャーシリーズは全部読んだ。

この本は、熱狂的なファンがいるような顧客サービスを作るための秘訣について教えてくれる。他の1分間シリーズと同じく物語風になっていて、非常にすぐ読める。けっこう面白かった。

いつもどおり本の中で印象に残ったところについて書いていこうと思う。

  • 顧客を中心にした完全なビジョンを作る
  • 顧客が何も言わない時に熱心に耳を傾けないといけない
  • 熱狂的ファン指標

顧客を中心にした完全なビジョンを作る

この本の中に、良い顧客サービスを作るためにはまず「顧客を中心にした完全なビジョンを作らなければならない」と書かれている。つまり、自分たちの顧客が使う上で、自分たちのサービスが理想としてはどうなっていなければならないかを考えなければならない。

理想を考えておくと、目標が決まる。理想を考えておくと、今の現実との比較ができる。今の現実と比較ができるというのは非常に良いことで、ここまで来るとあとはその違いを少しずつ埋めていくだけで少しずつ改善ができるようになる。


この手法は顧客サービスをよくする以外にも使えるように感じる。例えば自分のスキルが足りなくてなんとなく不安みたいな状態になった時。そういう時は最初にまずどうなったら不安がなくなるか理想を考える。その後その理想と今の自分で足りないスキル項目を明らかにする。あとはそれを1つずつ潰していく。こうすることでただ漠然と不安に思っているだけでなく、スキルを成長させることが出来る。


結局はまずは共有化出来る目標を何か作らないといけないのだなと感じた。

顧客が何も言わない時に熱心に耳を傾けないといけない

この本の中に「顧客が何も言わない時に熱心に耳を傾けないといけない」と書かれていた。それは大体の顧客は不快に感じてもそれを口に出さずに黙るため、何も言わない時にこそ不満点がある可能性が高いからということらしい。

最近サービスを作る時にアンケートとかもやってるんだけど、それにも同じようなことが言えるなーと思う。アンケートを送ると大体回答が偏ったりする。例えば自分のサービスを使っているユーザは大体PCを使っている、というような結果が出るとか。でもそういう時に顧客が求めているのはPCでの使いやすさだと早合点してはいけない。実際にはスマホのユーザは使いづらくて何も言わずに去ってしまっていて、アンケート上では出てきていない可能性もある。

このようなことを考えると、やめてしまったユーザとかそういうのにもきちんと焦点をあててインタビューなりしていき、声を引き出さないといけないのだろうと感じた。

熱狂的ファン指標

この物語の中で、熱狂的ファンがいるサービスを作るために、「熱狂的ファン指標というものをつくって、毎月、各部門と全従業員の評価をおこなっている」ということが書かれていた。

この話は面白い。これは熱狂的ファン指標というのが重要なのではなくて、会社が大事にしているポイントをきちんと評価指標とすることによって、社員に重要なポイントを伝えていることが面白い。

このように評価によって会社のメッセージを伝搬させるということも出来るのだなと感じる。

まとめ

今回は1分間顧客サービスを読んで、印象に残った所を書いた。

ここでちょっと疑問に思ったのが、「顧客サービス」って一体なんだろうということだ。僕の中では結局はすべての仕事が顧客サービスなのではないかと思う。Webサービスを作るのは利用しているユーザに対する顧客サービスであるだろうし、人事の仕事も社内のメンバーを顧客としたサービスになっている。仕事というのは社会に対して価値を出すというものであるので、それは結局は他の人にとって価値を発揮している。その時により良いものにするためには、「誰に」対して価値を発揮しているのかを必ず頭にとどめておく必要があると感じた。


これで1分間シリーズはすべて読み終わった。総じて非常に平易に書かれているわりにポイントを抑えていて良い本だった。マネジャーになったらとりあえずこの5冊は読んでみると良いと思う。

「ベストを尽くせ」だけではベストは生まれない - 「マネジメントとは何か」を読んだ

「マネジメントとは何か」を読んだ。

この本は人間の行動に関する研究論文を多く読んだ筆者が、その見識を専門用語を使わずにまとめてくれている本。採用、モチベーション、リーダーシップ、コミュニケーション、チーム作り、衝突の処理、職務設計、業績評価、変化への対応というように、人間の行動に関する主要な問題分野ごとに章立てされていて、それぞれの章でテーマに沿った知見を得ることができる。非常に簡潔な言葉でまとめられていて、かつ250ページほどの分量なのでかなり簡単に読め、内容はかなり興味深いものが多かった。


マネジメントに携わる人、例えば経営、チームマネジメント、人事などを仕事としている人には非常に参考になる文献だと思う。


いつもどおり、この本の中で印象に残った話題について書いていきたいと思う。

  • 「ベストを尽くせ」だけではベストは生まれない
  • 実際に望んでいる行動に報酬を

「ベストを尽くせ」だけではベストは生まれない

この本の中で、部下に自由にやらせ、ただ「ベストを尽くせ」と言うだけというのは、部下にモチベーションを与える一番良い方法ではないとしている。従業員や作業チームには具体的でレベルの高い目標を与えたほうがもっとよい結果を生むらしい。「人は目標があるときに最大の成果を挙げる」ということは多くの研究で証明されていると書かれていた。

これまでは自分自身はよく会社が行っている目標設定というのがなんのために行うのかということに疑問を抱いていた。しかしこのように目標設定をするべき理由の一つにモチベーションを高めるということがあることを知り、実際に研究からその制度自体が良いということが証明されているというのが興味深かった。

実際ほとんどの会社で目標設定というのを行っているように思うが、目標設定というのが何のために行われているかうまく定義されないままやっているところも多いのではないかと思う。モチベーションという要素は目標設定の効果の一部でしかないが、このような理由があるということを意識していたほうが、より効果的に目標設定を行えるのではないかと感じた。


また他にもこの目標設定については

  • 困難な目標のほうがいったん受け入れられると高い業績を生む
  • 目標は上司が決めても、部下と一緒に決めても効果は変わらない。ただし目標は受け入れられることが必須であり、部下が目標設定に参加すると目標が受け入れられやすい

など面白い内容が書かれていた。

実際に望んでいる行動に報酬を

この本の中に、以下のような話が書かれていた。

ある地域の警察官たちは出勤後パトカーに乗り込んで、待ちを横切るハイウェイに向かい、勤務時間中ずっとハイウェイを往復している。この高速走行が、優秀な警官の任務とあまり関係がないことは明らかだ。だが、あることがわかると、コンサルタントには警官の行動がよく理解できた。警察の仕事が役立っているかどうかを、市議会がパトカーの走行距離で判断していたのだ。市当局は、そうとは考えずに「パトカーのマイル数を増やすこと」に対して報酬を与えていた。だから警察官たちはマイル数を重視していたのだ

この話から、実際に経営陣が望んでいる行動を取ってもらうためには、適切にその行動に対して報酬を出さなければならないということが分かる。この本の中には

  • 実際に経営陣が望んでいる行動に報酬を
  • 例えば作っている製品の品質向上を望むのなら、品質に対して報酬を与えるべきだ

と書かれていた。

報酬のあり方を間違えると実際に望んでいる行動とは全然関係ない行動を取ってしまうことがあるというところが非常に面白い。しかも報酬のあり方は、気をつけないとよく間違えてしまうように思える。この本の中に書かれている残念な例として

  • 経営陣はチームワークを確立したいと言いながら、実際には報酬を個人の業績に対して与えている
  • 経営陣は品質の重要性を唱えておきながら、いいかげんな仕事をした従業員には何も言わず、品質に気を配ったために生産目標を達成できなかった従業員に罰を与える

というものがあったが、このようなことは確かによく起こっているように思えた。

取って欲しい行動をうまく評価指標に転換するのは難しいとは思うが、今後意識していきたいと思う。


またこの話から逆に考えると、会社として舵を切りたい方向があるのなら、それを報酬などの仕組みを利用して調整できるということが考えられる。これは以前読んだ爆速経営 新生ヤフーの500日 にも同じようなことが書かれていた。例えばモバイルの方に舵切りをしたいと考えたら、報酬や評価の指標をモバイルに寄せることにより、モバイル志向へ会社全体を動かすという感じ。もちろん舵切りをする方法は報酬や評価以外にもあって、教育の方法や採用の基準などによっても舵切りができる。もちろんこのような舵切りは会社全体だけでなくて、チーム単位でも事業部単位でも職種単位でも行えるように思う。

このように考えていくと、人事評価がなんのためにあるかの一側面がもう少し深堀り出来たように感じた。目標設定と同様このように意識しておくことで、さらに効果的に評価システムの設計を出来たりするのではないかと感じた。

まとめ

「マネジメントとは何か」は簡潔に書かれているが、その論拠は研究に基づいているため、核心をついた内容が書かれていて参考になった。今回は自分の中では、会社の方向性やチームの方向性を、評価システムなどを利用することで調整できるということを学んだのが非常に有益だった。たぶんまたどこかで再読するように思う。

今回の本を読んで、さらに組織論や業績評価について興味が湧いてきたので、次はそういう本を読んでいきたいと思う。

人を動かす秘訣はみずから動きたくなる気持を起させること - 「人を動かす」を読んだ

名著と言われているカーネギー著の「人を動かす」を読んだ。

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この本は人を動かす原則や、人に好かれる原則をさまざまな例を使いながら紹介してくれる。ちょっとうんざりするほど例が多いのだけど、その分言いたいことをイメージしやすくなるような構成になっている。

今回の本の中で、「人を動かす秘訣はみずから動きたくなる気持を起させること」と書かれているのが非常に面白かったので、このことについて今回は書いてみる。

人を動かす秘訣はみずから動きたくなる気持を起させること

この本の中で一番重要だなと思った言及に以下の様なものがある。

人を動かす秘訣は、まちがいなく、ひとつしかないのである。すなわち、みずから動きたくなる気持を起させること――これが、秘訣だ。
かさねていうが、これ以外に秘訣はない。

ではみずから動きたくなる気持を起させることはどうすればよいか?僕は以下の三つくらいが印象に残った。

  • 相手に重要感を持たせる
  • その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてやる
  • 人から押し付けられた意見よりも、自分で思いついた意見

相手に重要感を持たせる

まず相手に重要感を持たせる必要があると書かれている。人には食欲など様々な欲求があるがその中に「自己の重要感」という欲求もある。つまり「偉くなりたいという願望」である。これを満たすことが出来れば、みずから動きたくなる気持を引き起こすことが出来る。


重要感を満たすためにどうすればよいかというのはあんまりちゃんとまとめられて書かれていないのだけれど、例えば相手を心から賛成し、惜しみなく賛辞を与えよう、ということが書かれていた。これはいろんな本にかかれていることで、賞賛や励ましというものは人のモチベーションの向上に効果を与えたり、人材育成に役立つ。どんな本にも褒めることが重要であるということが書かれているのを思うと、それほど賞賛は大事なことなのだろう。

また、今日たまたまアニメのSHIROBAKOを見ていたら、「君はなぜ僕にこの仕事をやってもらいたいと思ったの?やっぱり君にしか出来ないと言われるような仕事をやらせてもらえると嬉しいものだよ」というようなセリフがあって、ああこれも重要感を持たせる方法の一つだよなと思う。その仕事自体に社会的価値があり、かつ自分ならそれを最大限に出来ると思ってもらえるようなことをしてもらうことが、相手に重要感を持ってもらい働いてもらうために必要なことなんだろうなと感じた。


相手に重要感を感じてもらうというのは重要だけど、非常に難しい話だと感じる。今後もどのようにすればいいかは考え続けていきたい。

その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてやる

さらにこの本の中に、

人に動いてもらうには、その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてやることだ

と書かれている。これは本の中に書かれている以下の話が分かりやすい。

エマーソンとそのむすこが、子牛を小屋に入れようとしていた。ところがエマーソン親子は、世間一般にありふれた誤りをおかした。自分たちの希望しか考えなかったのである。むすこが子牛をひっぱり、エマーソンがうしろから押した。子牛もまたエマーソン親子と全く同じことをやった。すなわち、自分の希望しか考えなかった。四肢を踏んばって動こうとしない。見かねたアイルランド生まれの女中が、加勢にやってきた。彼女は、論文や書物は書けないが、少なくともこの場合は、エマーソンよりも常識をわきまえていた。つまり、子牛が何を欲しがっているかを考えたのだ。彼女は、自分の指を子牛の口にふくませ、それを吸わせながら、やさしく子牛を小屋に導き入れたのである。

分かりやすい。得てして人は他人に動いてもらおうとした場合、自分の都合だけを考えがちである。しかし、それだと人は動いてくれない。人を動かすにはまずは相手の中に強い欲求を生み出さないといけない。


このことより人を説得して何かをやらせようと思った時には、この本に書かれているように、まず以下のように自分にたずねてみることが必要だろうと感じた。

「どうすれば、そうしたくなる気持を相手に起こさせることができるか?」

人から押し付けられた意見よりも、自分で思いついた意見

もう一つ、この本の中に書かれていた言葉に以下のようなものがある。

人から押し付けられた意見よりも、自分で思いついた意見の方を、われわれは、はるかに大切にするものである

これは実感的に正しいと感じる。いかに相手に説得されるよりも、自分からこうしたほうが良いのではないかと言い始めて始めたほうが、自らのモチベーションが高い。また、いろんな本に同じようなことが書かれていることを考えると、一般的に正しいのだろう。


それではどうすればいいかというと、以下の様な言及がある。

すると、人に自分の意見を押し付けようとするのは、そもそもまちがいだといえる。暗示を与えて、結論は相手に出させるほうが、よほど利口だ。

けっこう難しいことを言っているけど、1分間リーダーシップにもそのヒントが書かれていた。1分間リーダーシップではある目標に対する一定の習熟度を超えた人には援助によってモチベーションを高めると書かれているのだけど、その方法として「〇〇しようと思うんだけどどう思う?」とか「〇〇するにはどうしたら良いと思う?」のような問いかけをすると書かれている。このような問いかけは相手に考えさせてきちんと結論を出させるための一つの方法であるといえるだろう。


相手に思いつかせるというのは難しいとは思うが、主体的に動いてもらうには非常に重要に感じる。これからもどうしていけばよいか考え続けていきたい。

まとめ

今回は「人を動かす」を読んで、この本のテーマの一つである「人を動かす秘訣はみずから動きたくなる気持を起させること」について深堀りして自分の意見などを書いてみた。

「人を動かす」はけっこう面白い本で名著ではあると思うが、少しだけ例が多く個人的には回りくどいなと思ってしまった。とはいえそんなに時間はかからないので、一読してみると良さそうに思う。「道は開ける」よりはおすすめ。

もうそろそろマネジメントに関する具体的な事例を考えるには十分な情報量を取得できたように感じるので、そろそろ気合を入れてマネジメントの体系をざっと網羅することが重要に思えてきた。そのためには最近購入した「マネジメントとは何か」や「マネジメント入門」を読む必要があるなと感じる。このへんは年末年始の休暇を利用してなんとか読みきりたい。