最近話題になっていた「入門 監視」を読んだ。アプリケーションの監視をするための実践的なノウハウが詰まっていて非常に参考になる書籍だった。
この本では、アプリケーションを監視するための骨格となる考え方や、様々な層(フロントエンドからOSのメトリックまで)での監視の入れ方の実践的なノウハウ、さらには障害対応をスムーズに行うためのフローや障害の根本対応をチームで行えるようにするためのやり方まで書かれている。実践的なすぐに取り入れられるような内容が多く、「アプリケーションをどう監視したら良いか分からない!」「障害対応をもっとうまくやる方法はないのだろうか?」と思う人には参考になる部分が多いと思う。
個人的にこの本の中で一番良いなと思ったのは、
- SREだけでなくアプリケーションエンジニアも含めたアプリケーションに関わる人全員で監視を考えていくことが大事
- むしろアプリケーションエンジニアはそのアプリケーションに誰よりも詳しいはずなので、アプリケーション監視のデザインのための知識を誰よりも持っているはず
という話。最近僕のチームではSREがチーム内に所属するようになったためアプリケーションエンジニアにいろんな運用知見が伝えられた。それにより以前よりアプリケーションエンジニアも監視に詳しくなり自分たちで監視ルールを積極的に入れられるようになった。結果として、これまでアプリケーションの監視で漏れがあった部分が埋まってきていると感じている。この経験からこの本で書かれているような、アプリケーションエンジニアも含めて全員で監視を考えていくことに対する重要性に非常に共感できた
最近、監視はみんなでやろうという話を色んな場所で見かける一方、監視にアプリケーションエンジニアも携わるのが当たり前という認識が広まっているという状況にはまだまだなっていないなと感じている。そのためこの本をきっかけに、アプリケーションエンジニアとSREの監視に対する意識が統一され、監視を全員でやるのが当たり前という文化が広まると良いなと思った。
その他自分にとって参考になったのは以下のようなポイントだった。
- 監視というとサーバのOSのメトリクスなどからやってしまいがちだが、できるだけユーザーに近いところから監視を始めるのが最適
- HTTPのレスポンスコードやリクエスト時間など
- 3章のインシデントの対応フローとインシデント対応の際に必要なロール。またアラートからその根本対応をするためのやり方
とにかく実践的な内容ですぐに取り入れられるので一読してみると良さそうです!
読書ノート
* 問題を解決するための適切なツールを組み合わせて使うのは良い。連携して使えないたくさんのツールを持つのはアンチパターン(例: ネットワークのレイテンシとアプリケーションのレスポンスの悪化を関連付けられない)。連携できて役割が異なるなら良い 343 * ツールは誰かが使っている、使っていたからという理由では選ばず、現在の状況で試し、評価することが重要 373 * オペレーションチームだけでなく全員が本番環境全体に責任を持つことが大事。ソフトウェアエンジニアはアプリケーションに誰よりも詳しいので、アプリケーション監視の仕組みをデザインするのには最高の場所にいる 426 * 良い。実際にSREがチームに所属して、それによりアプリケーションエンジニアも監視を意識するようになった。それによりアプリケーションの監視の仕組み構築がもっと良くなったと感じる * 監視サービスのコンポーネント: データ収集、データストレージ、可視化、分析とレポート、アラート 572 * データ収集の手法として、メトリクスとステータス情報を/healthに出力し、その出力を監視する手法がある 595 * まず監視を追加すべきなのは、ユーザがあなたのアプリケーションとやり取りをするところ 824 * 監視とは、あるシステムやそのシステムのコンポーネントの振る舞いや出力を観察しチェックし続ける行為。アラートは、この目的を達成するための1つの方法でしかない 938 * 誤報はとにかく減らそう。アラートをチューニングする簡単な方法が1つある。 1080 * オンコール担当は前日に送られたすべてのアラートの一覧を作る * 一覧にひととおり目を通しながら、各アラートはどのように改善できるか、あるいはアラートを削除してしまえないか自問自答する * 監視自体は何も修復してくれないので、基礎にあるシステムを改善する時間を持たなければならない 1107 * オンコールシフト中、場当たり的対応をしていない時間は、システムの回復力や安定性に対して取り組むのをオンコール担当の役割にする * 前週のオンコールの際に収集した情報を元に、次の週のスプリント計画にシステムの回復性や安定性について取り上げる計画を立てる * オンコールローテーションは出勤日に始めると、チーム内で引き継ぎがやりやすくなる 1107 * ソフトウェアエンジニアもオンコールのローテーションに入れる 1157 * インシデント管理のプロセス * 1. インシデントの認識(監視が問題を認識) * 2. インシデントの記録(インシデントに対して監視の仕組みが自動でチケットを作成) * 3. インシデントの診断、分類、解決、クローズ(オンコール担当がトラブルシュートし、問題を修正し、チケットにコメントや情報を添えて解決済みとする) * 4. 必要に応じて問題発生中にコミュニケーションを取る * 5. インシデント解決後、回復力を高めるための改善策を考える * s: 簡潔によくまとまっている * 数分以上かかる本当のサービス停止には明確に定義された役割が重要 1157 * 現場指揮官、書紀、コミュニケーション調整役、インシデント対応役(作業員) * s: 現場指揮官は最もアプリケーションに詳しい人(例えばテックリード)が適切、コミュニケーション調整役はマネージャ(例エンジニアリングマネージャ)が適切、書紀はだれでも、対応役は全員でやる * フロントエンド監視にはリアルユーザ監視とシンセティック監視の2つのアプローチがある 1693 * リアルユーザ監視とは実際のユーザトラフィックを監視のデータとして使うこと(Google Analyticsでのフロントエンド計測とか) * WebpageTest.orgのようなものはシンセティック監視 * Navigation Timing APIのタイムライン 1791 * s: ブラウザのライフサイクルを知るのに非常に良い図 * フロントエンド監視では 1871 * 実際のユーザが見ているページのロード時間を監視しよう * JavaScriptの例外を監視しよう * ページのロード時間をCIシステムから計測し続け、ロード時間が許容時間内に収まるようにしよう * 分散トレーシングとは。リクエストに一意なリクエストIDを「タグ付け」することで、そのリクエストがどのサービスにアクセスしたか、各サービスでどのくらいの時間を過ごしたかが分かる 2290 * OS標準メトリクスから監視を始めるのはアプリケーションが動いているかどうかという重要事項と関連が弱いシグナルから始めることになるため、おすすめしない 2330 * ただしトラブルシューティングの味方になるので、全システムで自動的に記録しアラートは設定しないくらいが良い * 8章にはOSのメトリクスや他のよくあるコンポーネントのメトリクスの説明があるので、知りたかったら読むと良い 2330