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「カスタマーサクセス」読んだ

「THE MODEL」読んだ - $shibayu36->blog;に引き続きSaaSを学ぼうということで、カスタマーサクセス──サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則を読んだ。なぜSaaSサブスクリプションモデルではカスタマーサクセスが重要なのか、そもそもカスタマーサクセスとは何か、カスタマーサクセスがもたらすものは何か、カスタマーサクセスで追いかけるべき指標は何か、カスタマーサクセスを行う上で大切にすべき原則は何か、といった内容を学べた。

特に印象に残ったのは以下の部分だった。

  • サブスクリプションモデルの浸透によって、たくさんの顧客に継続的に販売しなければならなくなり、カスタマーサクセスの重要性が増している
    • 開始・離脱が簡単になったことにより、決定権のパワーが顧客側にシフトしている
  • カスタマーサクセスは、自社の成功のために顧客をサポートするのではなく、顧客の成功を第一の目的とする
    • カスタマーサクセス = 顧客の成果 + 顧客の経験
    • それぞれの顧客がどのような状態かデータで把握し、顧客をより良い状態に導く
    • 顧客の階層に応じて、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチという対応レベルを使い分け、顧客の成功と自社の収益とが両立する合理的なバランスを取る
    • 成功を得られた顧客は継続顧客となり、それから得る定期収益が自社に成功をもたらす
  • カスタマーサクセスがもたらす利益3つ
    • チャーンの減少と管理
    • 既存顧客の契約金増
    • カスタマーエクスペリエンスと顧客満足度の向上
  • 原則1:正しい顧客に販売しよう
    • チャーンの原因の大部分は間違った顧客への販売。間違った顧客に売るくらいなら売らない方が良い
  • 原則7:タイムトゥバリューの向上にとことん取り組もう
    • できるだけ早くに顧客が製品から価値を享受できたと思われる必要がある
    • 12ヶ月間の契約期間に対して、導入と運用に11ヶ月かかった場合と、2ヶ月で完了した場合とでは、更新率はもちろん後者の方が高い

読書メモ

* サブスクリプションモデルの浸透によって、たくさんの顧客に継続的に販売しなければならなくなり、カスタマーサクセスの重要性が増している 22
    * 開始・離脱が簡単になったことにより、決定権のパワーが顧客側にシフトしている 35
* カスタマーサクセスは、自社の成功のために顧客をサポートするのではなく、顧客の成功を第一の目的とする 22
    * カスタマーサクセス = 顧客の成果 + 顧客の経験
    * それぞれの顧客がどのような状態かデータで把握し、顧客をより良い状態に導く
    * 顧客の階層に応じて、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチという対応レベルを使い分け、顧客の成功と自社の収益とが両立する合理的なバランスを取る
    * 成功を得られた顧客は継続顧客となり、それから得る定期収益が自社に成功をもたらす
* カスタマーサクセスは、顧客のリテンションやアップセル・クロスセルを促進するだけでなく、顧客自身が商品を紹介してくれる人を生み出しマーケティングにも寄与する 204
* サブスクリプションモデルでは、新規顧客の獲得・高いリテンション率・アップセルの3つが噛み合う必要がある 282
* カスタマーサクセスとは、顧客の成功につながるような組織または理念 501
* カスタマーサクセスは、チャーンを制御できる 681
* LTVとは、顧客がある会社との関係を持っている間に使うと考えられる金額の合計。SaaS企業にとっての重要な指標 693
* カスタマーサクセスとは、リテンション率とLTVを最大限引き上げることを目標として、カスタマーエクスペリエンスに特化した組織のこと 710
* カスタマーサクセスがもたらす利益 3つ 723
    * チャーンの減少と管理
    * 既存顧客の契約金増
    * カスタマーエクスペリエンスと顧客満足度の向上
* カスタマーサクセスの主な指標 810
    * 総更新数
    * 純リテンション
    * 定着率
    * カスタマーヘルス
    * チャーン
    * アップセル
    * ダウンセル
    * ネットプロモータースコア
* 上記指標を運用するために、次のような取り組みが行われる 830
    * ヘルスチェック
    * 四半期ビジネスレビュー
    * 積極的な訪問支援
    * 教育・トレーニング
    * ヘルススコアの測定
    * リスク評価
    * リスク低減プロセス
* カスタマーサクセスとは何か 928
    * 収益ドライバー
        * 契約更新(チャーン回避)
        * アップセル
    * 能動的
        * 顧客要望に対応するのではなく、データや分析結果から能動的に行動
    * 成功重視
        * 仕事効率ではなく、更新率、アップセル率、顧客基盤全体の成長率に責任を持つ
    * 分析中心、予測性 964
        * カスタマーサクセスをもたらすのは先を見越した予測分析
* カスタマーサクセスという理念は、同名の組織だけではなく、会社全体とその組織文化に浸透しなければならない 977
    * 売上だけでなくリテンション率も全社指標に入っているとか
* カスタマーサクセス文化による製品部門への影響 1076
    * 製品に関する考え方を売上からリテンションへシフトする。潜在顧客が感じた魅力的なイメージどおりの製品が顧客に届かなければならない
* ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチ 1261
    * ハイタッチ:最も人手が必要だが、かかった費用は顧客が製品に支払う金額で元が取れる。1社からの利益が多い
    * ロータッチ:ハイタッチとテックタッチの混合
    * テックタッチ:全ての顧客との接点がテクノロジー主導で行われる

### カスタマーサクセスの10原則
カスタマーサクセスの10原則とは、「カスタマーサクセスを成功させるために、そして成功する定期収益ビジネスを生み出すために、私の会社に必要なものは何だろうか」に答えるもの 1569

* 原則1:正しい顧客に販売しよう 1572
    * チャーンの原因の大部分は間違った顧客への販売 1700
* 原則2:顧客とベンダーは何もしなければ離れる 1767
    * 気付き:辞めるコストが低く、外部環境の変化も激しくなっているため、常に変化が求められる
* 原則3:顧客が期待しているのは大成功だ 1987
    * 顧客は機能を使うために買うわけではない。顧客は事業目標を達成したいから製品を買う
    * 顧客を大成功に導くために理解しなければならないこと3つ 2002
        * 顧客はどうやって成功を測っているか。顧客が勝利宣言するために求められる成果は何か
        * 顧客はその価値を達成しているか、現実的に達成が可能な道を進んでいるか
        * その過程で、顧客はあなたからどんなカスタマーエクスペリエンスを得ているか
* 原則4:絶えずカスタマーヘルスを把握・管理する 2223
    * リテンションに関わる指標あるカスタマーヘルスの現状把握と管理は必須
    * 顧客の健全性全体の判定に使えるものの例 2290
        * 製品定着率:製品利用頻度や、最も魅力的な機能を使っているか、利用者の人数、幹部レベルの人は使っているか、役員会議や取締役や部内会議などで使われているか
        * カスタマーサポートの利用状況
        * アンケートなどの調査結果:回答してくれるかどうかも重要
        * マーケティング(例えばメールなど)の関与度:開封率やクリック率など
        * コミュニティへの参加度
        * 契約金額の増減
        * 自立度
        * 支払い履歴
        * 幹部との関係性
* 原則5:ロイヤルティの構築に、もう個人間の関係はいらない 2441
    * 関係構築の手段として人手がかかるものではなく、テクノロジー寄りの方法を取ることが求められている
* 原則6:本当に拡張可能な差別化要因は製品だけだ 2659
    * 人は問題が起きたら自分で気づいて対処したい。自己診断ツールが構築されていれば、ユーザーは自分で答えを見つけられるし、取るべき行動もわかる 2709
        * 気付き:セルフサービススコア
    * あると便利程度の目新しい機能をつけたくなるが、顧客の社内プロセスはそんな機能を使いこなせるほど成熟していないことも多い。製品そのものが提供すべきなのは次の段階への足掛かりである 2782
* 原則7:タイムトゥバリューの向上にとことん取り組もう 2870
    * できるだけ早くに顧客が製品から価値を享受できたと思われる必要がある
    * 12ヶ月間の契約期間に対して、導入と運用に11ヶ月かかった場合と、2ヶ月で完了した場合とでは、更新率はもちろん後者の方が高い
* 原則8:顧客の指標を深く理解する 3073
    * チャーンとリテンションを定義・計測・理解するには、以下の5つのステップで進める 3095
        * 計測方法とCMRRの要素を定める -> 計測期間と頻度を定める -> CMRRの予想値とチャーンの種類を決める -> チャーンの疑いがある状態とチャーン間近の状態とを区別する方法を決める -> 各社の上層部が足並みを揃えて、チャーンとリテンションの基準となる定義と報告方法を固める
        * 更新CMRRをさらに、撤回、ダウングレード、アップグレード、初回アーカイブといった細かい項目に分けると良い
    * 年間定期収益の上昇・下降から踏み込む詳細 3252
        * 契約規模を拡大した顧客の割合は?
        * 最もチャーンレートが高い業界は?
        * 製品ごとのリテンションと成長率は?
        * 初回更新における割引率の平均引き下げ幅は?
        * 3年以上継続している顧客の、当初の契約規模に対する平均契約規模は?
* 原則9:ハードデータの指標でカスタマーサクセスを進める 3281
* 原則10:トップダウンかつ全社レベルで取り組む 3506
    * カスタマーサクセスは会社全体に広げなければならない理念
    * どこから始めれば良いか 3575
        * 顧客にとっての成功を定義する。顧客に成功は何かヒアリングする
        * 成功に関して全ての部署が協力できるようにする
        * カスタマーサクセス部門の話に耳を傾ける
        * カスタマーサクセスに関することを最優先する
        * カスタマーサクセス部門に権限を与える
        * カスタマーサクセスを計測する・可視化し定期的に見る
        * カスタマーサクセスに報奨を与える