最近コーチングという分野に興味を持って、まずは簡単でさくっと読めそうな「ザ・コーチ」という本を読んだ。
この本は、副題も含めると「ザ・コーチ - 最高の自分に出会える『目標の達人ノート』」という題名で、その名のとおり目標設定をなぜ行うのか、どうやって行うのかについて知ることが出来る本だった。1分間シリーズのように小説形式となっていて、すぐに読むことが出来る。
現在、自分が目標って何のためにあるのかもう一度知りたいと思っていた時期だったので、非常に面白かった。読書メモがかなりの量になった。マネージャーをやっている人や、その方向に行きたいと思っている人、他にも教育を担当している人は是非おすすめ。
以下のことが印象に残ったので、それについて書こうと思う。
- 目的・目標・ゴールの定義と、目標設定の仕方
- 会社の目標と個人の目標の接点を見つける
目的・目標・ゴールの定義と、目標設定の仕方
目的・目標・ゴールの定義
この本の最初の方で、まず目的・目標・ゴールの定義について書かれている部分がある。これによると、次のように書かれている。
- 目的とは「成し遂げようと目指す事柄」
- 目標とは「目的を達成するために設けた目当て」
- ゴールとは「目的のための最終的な目印」
また、目的・目標・ゴールの具体的な例として、アスリートの例をあげられていた。
- 目的 : 自分が可能性に挑戦することで、子どもたちに夢を持つことの素晴らしさを伝えたい
- ゴール : 今度のオリンピックで金メダルを取る
- 目標 : 今月、合計五百キロを走り込む
そして、目的・ゴール・目標の関係としては、まず自分が成し遂げたい目的があり、その目的のためのゴールが複数あり、それぞれのゴールのためのステップとして目標があるということだった。
目標設定の仕方
確かに目標を設定するときに、このことを忘れがちになるので、はっきり意識しておいたほうが良いと思った。得てして「どこに行きたいのか」をはっきりさせず、ただ短期的な数値目標を個人目標にしてしまい、目標の意味がわからなかったり、なんとなくノルマに感じるだけになってしまったりする。例えば、 会社は真面目に経営されるほど「学習しない組織」になってしまう | iXキャリアコンパス にあげられているデメリットは、まさにゴールとかを決めずに短期的な目標を作っていると陥るようなことについて紹介されているのではないか、と思った。
これらから、目標設定をするときは、まず目的やゴールをはっきりさせ、その上でステップとしての目標を決めなければいけないなと思った。自分の中ではゴールと目標のイメージは下図のとおり。
この図から考えると、目標設定の手順としては
- まず目的やゴールをはっきりさせる
- ゴールは、その人がイメージしやすいものでいい
- 例えば3年後になりたいエンジニア像とか、クリエイターを応援するためのサービスを作るとか
- 次に自分の現在位置をはっきりさせる
- 現在位置とゴールを比べれば、差分が明らかになるので、その差分を埋めるためのステップを目標として置く
となりそう。このようにゴールをはっきり作って目標を決めることで、目標1や2はゴールに向かって一直線になっているのでよい目標だとか、目標3は少し外れてしまったから微妙だったかもしれないとか、振り返ることもできそうだった。もしゴールを定めなければ、振り返るどころか自分のめざしたいところの逆方向に行ってしまうかもしれない。
以上のように、今後はこのような手順を意識して目標設定をしていきたい。
このテーマの蛇足
このテーマについて読んで、経営の話とかでよく出てくるミッション・ビジョン・バリューという言葉を思い出した。ミッション・ビジョン・バリューという言葉は、この目的・ゴール・目標と近いと思った。しかし、個人的にはミッション・ビジョン・バリューという言葉はあまりしっくり来ていない。そこで、今回の本で出て来るワードを使って、ミッションを目的、ビジョンをゴール、バリューを価値観(このワードもこの本の別のところで出てくる)、そしてそれを達成するためのステップを目標、という言葉に言い換えたほうが、自分の中でなんとなくしっくりくるなと思った。
会社の目標と個人の目標の接点を見つける
組織が人に目標を与える時のコツとして、会社の目標と個人の目標の接点を見つけて共有するとよいということが書いてあった。会社にも何かしらの目的とゴールがある。そして個人にも同様に目的とゴールがある。なので、会社のゴールと個人のゴールをすり合わせ、それらがある程度一致できるような部分を目標にすると、個人としてのモチベーションにもつながるということだ。
自分の印象では、このような接点を見つけて目標を立てるということをちゃんとしている会社は、あまり無いだろうなとも思った。例えば会社に、今期のチームは◯億円売上をあげることだから、チームの人数で割ると君は◯百万の売上を目標に頑張ってくれと言われる会社が多い印象である。これでは目標に納得はいかないだろうし、それは会社の都合でしょとしか思えない。
この時に、もし会社の目的がIT技術を使って社会を豊かにするとかになっていて、またAI技術について興味がある人がいた時に、個人目標で「AI技術を社会に活用するために、半年間AI技術の学習をする」とかになっていたら、先程の目標よりはもっとやる気になるだろう。
このようなことは目標を一緒に立てるマネージャと部下の両方共に意識しないといけないだろうなと思う。マネージャは決められたチーム目標を単にブレイクダウンして押し付けるだけにせず、部下のやりたいこととすり合わせる必要がある。逆に部下はチーム目標を理解した上で、それと一致するような自分のやりたいことについて、もっとアピールしなければならないだろうなと思った。部下としてもマネージャのせいにばかりしていては進歩がない。
まとめ
今回は「ザ・ゴール」という本を読んで、目標設定について学習したことについて書いてみた。非常に面白い本で、すぐに読める本なのでとにかくオススメ。マネージャだけでなく、誰かの教育係となっている人にも参考になると思う。
今回の本はコーチングのことについて学ぼうと思い、読んでみた。しかし、コーチングという分野を体系的に学べるような本ではなかったように思った。
そこで今後はもう少し体系的に学べそうな本を読みたい。「コーチングのすべて」、「コーチング・バイブル」あたりを考えている。他にも学習パターンとかを知りたいので、「経験学習入門」という本も読んでみたい。他におすすめな本があれば教えてください。
関連
- 会社は真面目に経営されるほど「学習しない組織」になってしまう | iXキャリアコンパス
- 同じようなテーマを扱っている、1分間マネージャという本もオススメ
読書メモ
読んでいる時に書いた読書メモを貼り付けておく。今回書いたところ以外にも、「ゴールを設定することを妨げているもの」というテーマを書いていた部分も面白かった。
夢・目的・目標・ゴール・ビジョンの意味とは何か
- 夢・目的・目標・ゴール・ビジョンの意味 464 ☆
- 目標とは「目的を達成するために設けた目当て」。目標はあくまで、目的に向けての目印でしかない 479
- 目的とは「成し遂げようと目指す事柄」 479
- 目的を実現するために目標を定め、それに向かって行動するのが大事 479
- ゴールとは「目的のための最終的な目印」 495
- 目的・ゴール・目標の三つが揃って初めて、目標を立てることの効果が生まれる 526
- 夢とは「将来実現させたいと、心の中に思い描いている願い」 526
- ビジョンとは自分自身や家族、チームや会社の「将来の理想像や未来の光景」 561
- ドリームツリーの図 599
- 自由に「夢」をリストアップする。その中から大事ないくつかを選ぶ。なぜそれを手にしたいのかといった「目的」や「ゴール」をはっきりさせる。そして、ゴールを手にするために、具体的な通過点の「目標」を設定する。さらにゴールに向かう行動を促進するために、「ビジョン」のイメージを心のなかに描く
- まず目的があり、その目的のためのゴールがいくつか設定され、ゴールのための目標がさらにいくつか設定されるイメージ
夢・目的・目標・ゴール・ビジョンを明確に設定して行動していくことで、自分が得られるベネフィット
- 人間は物質的なこと(車や家など)をゴールとして設定するが、実はゴールを手にして得られる感情を求めている 747
- 「夢」「目的」「ゴール」を意識していると、それに関係する情報をキャッチできる可能性が高くなる 772
- ゴールを目指すことは決断の連続なので、自身の選択力と決断力が磨かれる 792
- 夢・目的・目標・ゴール・ビジョンを設定することによるベネフィット 811
夢やゴールを設定することを妨げているもの
- ゴールや目標を設定するときのブレーキ一覧 967 ☆
- 例
- 結果だけで決められる評価
- ゴールという意味についての無知
- 変化や選択、決断に対する恐れ
- ゴールを設定するブレーキを軽くするには ☆
- ブレーキを感じたらゴールを小さくする 975
- ゴールや目標に対する知識を教える 996
- 目標を決めたら最後までやり遂げる必要があるという考えを、あくまで通過点なので再設定して良いという考えに変える 1006
- 結果に価値を置く考え方を、成長の過程に価値を置く考え方に変える 1015
- 失敗の意味付けを悪いことではなく、学習のチャンスという意味に変える 1022
- 人に教えるときは、Why(理由や根拠、目的の明確化)、What(何が必要か、どんなことが全体を構成しているか)、How(実際にどのようにすればよいか)の三つを与えると、行動しやすくなる 996
組織において部下にゴールを設定する時のポイントは何か?
- 組織が人に目標を与えるときは、会社の目標と個人の目標の接点を見つけて共有する 1148 ☆
- これがブレイクダウンの本当の意味でもある
- しかし、あくまで個人からも提案する必要あり
- ゴールを設定するときは、ゴールを手にする目的をゆらぎなく持って、道筋である目標設定は柔軟に考える 1211 ☆
- ゴールを手にする方法は無限にあるので、目標は柔軟に変えても良い
- ゴール達成を構成している要素を分解し、そこに期日・量・基準を盛り込んで目標を立てる 1238 ☆
- その人に合ったやり方に合わせて、ゴールや目標の設定を行う 1246
ゴール設定をより効果的にするポイントは他にあるか
- ゴールの構成要素を分解したリストを用意する、ゴールを手にした時のイメージを用意する、ゴールを手にする行動計画を用意する 1282
- 分解したリストが目標、ゴールを手にした時のイメージがビジョン、行動計画がアクションプランかな
- さらに時々立ち止まって、誰かと一緒に確認する 1291
- 行動のエネルギーになるものは何か、つまり動機を明確にすると、ゴールへの行動を促進できる 1310
- ゴールツリー 1347
- 目的はいきがいややりがいにつながるものにし、それとセットにゴールを決める 1377
- ゴールのための行動計画(例えば毎日n分勉強するとか)を目標とすると、ノルマ化して意欲が下がる 1395 ☆
- ゴールを設定したら、ゴールツリーを書いて、そのゴール達成を構成する知識と能力とツールに分解する 1462
- 目標を考えるときは、いつ、何が、どうなっているかという状態を表すものにする 1536
- その人の価値観を組み込んだ目標文にすると、より良い目標文となる 1771
- 価値観を知る言葉リスト 1788
- ゴールに向けて行動する際のポイント 1860
- 目標の達人、というのがこの本のタイトルでもいいくらいな気がする ☆