組織のことを体系的に学習したいと思って、組織論補訂版を読んでいる。
組織の理論を体系的にまとめられているので、非常に知識が得られる。一方で専門性も高く、読みながら自分できちんと具体的な例を想像していくというように丁寧に読まないと理解がついていかないとも感じている(これは自分の実践や前提となる知識不足を感じる)。なので、一つずつ丁寧に理解していきたい。
ひとまず、「第Ⅰ部 組織論の基礎」を読んだ。第Ⅰ部は3章構成。
- 第1章 なぜ組織理論を学ぶのか
- 第2章 組織の定義
- 第3章 組織均衡と組織論の枠組み
面白いなーと思ったのは、満足化意思決定、行動プログラム、組織均衡論、有効性と能率性の話かな。
- 満足化意思決定とは、限られた数の選択肢を逐次的に探索し、各選択肢のもたらす結果および効用について限られた範囲内で期待を形成し、その効用が一定の基準を越えていれば、その選択肢を採用する 32
- この場合、どの順番で、どこから、どのような方向に探索するかで、最終的に選択される解が異なる 33
- なぜなら満足する選択肢が見つかった時点で決定されるから
- 限られた情報処理能力をいかに効率的に活用するか -> 「行動プログラム」が規定されることで、探索プロセスにかかるコストと時間は大幅に節約される 33
- 日常の反復的な行動や、組織内の多くの行動は、この行動プログラムにより支配されている
- 組織均衡論とは、組織が成立・存続していくためには、どのような条件が必要になるかを明らかにした理論 42
- 組織均衡論の中心的公準 42 ※
- 1. 組織は、組織の参加者と呼ばれる多くの人々の相互に関連した社会的行動の体系である
- 2. 参加者それぞれ、および参加者の集団それぞれは、組織から誘因を受け、その見返りとして組織に対して貢献を行う
- 3. それぞれの参加者は、彼の提供される誘因が、彼が行うことを要求されている貢献と、等しいかあるいはより大である場合にだけ、組織への参加を続ける
- 4. 参加者のさまざまな集団によって供与される貢献が、組織が参加者に提供する誘因をつくり出す源泉である
- 5. したがって、貢献が十分にあって、その貢献を引き出すのに足りるほどの量の誘因を供与している限りにおいてのみ、組織は「支払い能力がある」―存在し続けるであろう
- 満足基準による意思決定を前提とすれば、ある目標について有効な手段は複数存在する。その中で具体的にどれが選択されるかは「能率」の概念から決定される。 46 ※
- 能率とは、一般に、インプットのアウトプットへの変換率
- すべての参加者についてIi(i番目の参加者の誘因効用) >= Ci(i番目の参加者の貢献効用)が達成できなければ組織は存続できないため、一定の能率以上が必要
この本を読んでいる時の前提知識として以下の本の内容が非常に参考になっているので、先にこっちを読んでおくと良いかも。
読書ノート
## 第Ⅰ部 組織論の基礎: 第1章 なぜ組織理論を学ぶのか - 組織論は、現代社会の基礎的構成要素としての組織を対象とし、その行動や変化のメカニズムを解明する学問 3 ## 第Ⅰ部 組織論の基礎: 第2章 組織の定義 - 「組織」とは、「2人以上の人々の、意識的に調整された諸活動、諸力の体系」 20 - 組織の概念その1: 組織を構成する要素は、人間そのものではなく、人間が提供する活動や力である 20 - 個人と活動とを区別することが最も本質的 - この概念により、組織が成立するためには、個人から組織に必要な活動を引き出すことが必要ということが分かる - 組織の概念その2: 組織を構成する諸活動・諸力は、体系(system)として互いに相互作用をもつ 21 - 組織の相互作用は、必ずプラスの効果を生むとは限らなく、ときには利害の対立などが起こる(コンフリクト) - 組織の概念その3: 組織を構成する諸活動は、「意識的に調整」されている - 組織の概念を具体的なイメージにする例 23 ※ - 岩をその道からどけるという例がわかりやすい - 岩をどけるには、それぞれが全力で岩を押すという活動をし(活動の提供)、岩を押す方向をとタイミングを一致(相互作用)させる必要がある。そのためには、事前にどの方向に押すか、どういう合図で押すかなどの調整が必要である(意識的調整) - 組織とは、岩が動き出してから、退けられるまでの間に存在する合力 - 組織は、一定の時間的広がり(ある一定の時間内)の中にのみ存在する 24 - 企業では、勤務時間のみ組織があり、それ以外に組織は存在せず、また勤務時間が始まると組織が再構築されているとみなせる - 組織は、繰り返し行われる組織化のプロセスのスナップショットとして観察される - 一定期間以上存在する組織は、絶えず繰り返される組織化の努力によって維持されなければならない 25 - 組織は、(1)互いに意見を伝達できる人々がおり、(2)それらの人は行為を貢献しようとする意欲をもって、(3)共通目的の達成をめざすときに成立する 25 - 組織成立のための必要十分条件である組織の三要素とは、伝達、貢献意欲、共通目的 - 意思決定をするにま、「意思決定前提」が必要 27 - 目標、代替的選択肢の集合、各代替的選択肢の期待される結果の集合、各結果がもたらす効用の集合、意思決定ルール - 満足化意思決定とは、限られた数の選択肢を逐次的に探索し、各選択肢のもたらす結果および効用について限られた範囲内で期待を形成し、その効用が一定の基準を越えていれば、その選択肢を採用する 32 ※ - この場合、どの順番で、どこから、どのような方向に探索するかで、最終的に選択される解が異なる 33 - なぜなら満足する選択肢が見つかった時点で決定されるから - 限られた情報処理能力をいかに効率的に活用するか -> 「行動プログラム」が規定されることで、探索プロセスにかかるコストと時間は大幅に節約される 33 ※ - 日常の反復的な行動や、組織内の多くの行動は、この行動プログラムにより支配されている - 殆どの場合、満足化意思決定が行われると考えるならば、動機づけられた人間の適応行動を次のように表現することができる 34 - 1. 意思決定主体の満足度が低ければ低いほど、代替的選択肢に対する探索活動はそれだけ積極的に行われる - 2. 探索活動が積極化すればするほど、いっそう多くの報酬が期待されるようになる - 3. 報酬の期待値が高くなればなるほど、満足度も高くなる - 4. 報酬の期待値が高くなればなるほど、決定主体の希求水準も高くなる - 5. 希求水準が高くなればなるほど、満足度は低くなる - 人の行動に影響を与えるには、その人の意思決定プロセスに介入し、意思決定前提に影響を与える必要がある 37 ## 第Ⅰ部 組織論の基礎: 第3章 組織均衡と組織論の枠組み - 組織均衡論とは、組織が成立・存続していくためには、どのような条件が必要になるかを明らかにした理論 42 - 組織均衡論の中心的公準 42 ※ - 1. 組織は、組織の参加者と呼ばれる多くの人々の相互に関連した社会的行動の体系である - 2. 参加者それぞれ、および参加者の集団それぞれは、組織から誘因を受け、その見返りとして組織に対して貢献を行う - 3. それぞれの参加者は、彼の提供される誘因が、彼が行うことを要求されている貢献と、等しいかあるいはより大である場合にだけ、組織への参加を続ける - 4. 参加者のさまざまな集団によって供与される貢献が、組織が参加者に提供する誘因をつくり出す源泉である - 5. したがって、貢献が十分にあって、その貢献を引き出すのに足りるほどの量の誘因を供与している限りにおいてのみ、組織は「支払い能力がある」―存在し続けるであろう - 組織の有効性とは、共通目的を達成するための手段の選択に関する概念。ある手段が、組織の目標水準を達成するとき、その手段は有効であるという 46 - 組織の構造やマネジメントシステムをどのようにするかは、いずれも組織目的を達成できるか否か、つまり有効性の観点からデザインされる 46 ※ - 満足基準による意思決定を前提とすれば、ある目標について有効な手段は複数存在する。その中で具体的にどれが選択されるかは「能率」の概念から決定される。 46 ※ - 能率とは、一般に、インプットのアウトプットへの変換率 - すべての参加者についてIi(i番目の参加者の誘因効用) >= Ci(i番目の参加者の貢献効用)が達成できなければ組織は存続できないため、一定の能率以上が必要 - 組織には、厳密な「組織」概念における境界、ドメインとしての境界、意識的調整の及ぶ範囲としての境界の三つの境界の分類がある 50 - 意識的調整の及ぶ範囲としての境界概念が、日常用いる意味での「境界」に最も近い 51 - 組織と環境の図 53 - 組織が存続するためには、一定以上の有効性と能率を達成しなければならない 56 - インプットの総和より大きいアウトプットを生み出すメカニズムの一つが、分業と統合のメカニズム 56 - 組織が一定以上の能率を発揮するためには、分業にもとづく専門化の利益が、分断された業務を統合するコストよりも大きいことが必要である - 組織は構造をもつことで、統合のコストを低く抑えつつ、専門化の利益を発揮しようとする - 専門化は、素人に比べてより多くの行動プログラムをもつので、迅速に問題を解決できる 57 - 反復行動で、行動プログラム化することが、専門化の利益 - 調整・統合は基本的にコミュニケーションを通じて行われる。コミュニケーション・プロセスをプログラム化することで、調整・統合コストが削減できる 57 - 利用される用語、時間、伝達形式を曖昧性の少ないものに特定化し、使用するコミュニケーション・チャネルを特定化する - 既存の組織構造の枠組みの中で行われる適応を「短期適応」、組織構造の変更を伴って展開される適応を「長期適応」という 59