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クラスター株式会社のソフトウェアエンジニアです。エンジニアリングや読書などについて書いています。

意思決定の精度を上げるプロセスを知る - 「決定力!」を読んだ

最近いろんな種類の意思決定をする機会が増えてきた。そういう状況の中で精度の高い意思決定をするための良いプロセスがあるのか気になったので、「決定力!」という本を読んだ。

[asin:4152094036:detail]

この本は意思決定を行うためのプロセスと、それぞれの手順でどのような罠があるか、そしてその罠に打ち勝つためにどのようなテクニックがあるかについて教えてくれる。意思決定の「型」を知るために非常に参考になったので、どうすればより良い決断が出来るのかについて悩んでいるなら参考になると思う。自分にとっては非常に参考になった。


意思決定のプロセス、それぞれの罠、罠を回避するための考え方を簡単にまとめると

  • 選択肢を洗い出す、選択肢を分析する、選択する、選択の結果を受け入れるの順で決定していく。各段階での罠に注意。WRAPプロセスを使って回避する。
    • 選択肢を洗い出す: 「視野の狭窄」によって選択肢を見逃してしまう -> W 選択肢を広げる
    • 選択肢を分析する: 「確証バイアス」によって都合の良い情報ばかり集めてしまう -> R 仮説の現実性を確かめる
    • 選択する: 「一時的な感情」によって間違った選択をしがちになる -> A 決断の前に距離を置く
    • 選択の結果を受け入れる: 未来の出来事について「自信過剰」に陥りやすい -> P 誤りに備える

罠を回避する考え方である「選択肢を広げる」「仮説の現実性を確かめる」「決断の前に距離を置く」「誤りに備える」の具体的なテクニックについては書籍に様々なものが書いてあるので、興味がある人は読んでみると良いと思う。


そのほか印象に残ったことは以下の二点があった。

  • 正しい意思決定をするには反対意見を求める勇気が必要
    • 実際に意思決定のプロセスを開示して他の人に建設的な批判をもらうことで意思決定が洗練された経験があるので納得
    • 反対意見をいろいろ聞いていくのダメージはあるけど頑張ろう
  • 意思決定のときは「公正に決められた」と周りに感じさせるのが大事
    • そのためのテクニックとしては、相手の見解を相手より的確に言い直す、意思決定を擁護するのに自身の決定の欠点をあえて指摘するなどがある


この本で意思決定の「型」を知ることができたので、ひとまずその型に従って選択をしていきたいと思う。

読書ノート

* 意思決定は選択に直面する(選択肢を洗い出す)、選択肢を分析する、選択する、選択の結果を受け入れるの四段階で進められる。それぞれの段階で罠がある 459
    * 選択肢を洗い出す: 「視野の狭窄」によって選択肢を見逃してしまう
    * 選択肢を分析する: 「確証バイアス」によって都合の良い情報ばかり集めてしまう
    * 選択する: 「一時的な感情」によって間違った選択をしがちになる
    * 選択の結果を受け入れる: 未来の出来事について「自信過剰」に陥りやすい
* WRAPプロセスを使い、これらの罠を回避していく 548
    * 選択肢を洗い出す(視野の狭窄) -> W 選択肢を広げる
    * 選択肢を分析する(確証バイアス) -> R 仮説の現実性を確かめる
    * 選択する(一時的な感情) -> A 決断の前に距離を置く
    * 選択の結果を受け入れる(自信過剰) -> P 誤りに備える
* W: べきか否か形式の意思決定は失敗しやすい。これをアラームにする 835
* W: 意思決定のたびに「この選択をしたら何を諦める必要があるか」「同じ時間とお金で何ができるか」を自問し、費用を意識する 1007
* W: 今考えている選択肢がどれも選べないとすると他に何ができるかと自問する 1013
* W: いくつかの選択肢を同時に考慮する(マルチトラッキング) 1246
    * 例えば制度設計を一案ではなく二案出すだけでも違う
    * 順繰りに検討するのではなく並行に検討することに注意
* マルチトラッキングで意思決定の選択肢を一つ増やすと、3つの理由で意思決定の質があがる 1222、1255、1447
    * 風景理解、政治的いざこざ抑え、いざというときの代替案
* アイデアを順繰りに検討するのはマルチトラッキングではない 1434
* W: 自分で選択肢を思いつかなければ自分と同じ問題を解決した人を見つける。外部や組織の内部で探す 1496, 1590
* W: 問うべき疑問、参照すべき原則、検討すべきアイデアのように選択肢を広げる質問を持っておく 1652
    * 既存の支出を抑えるのではなく、予定していた支出を先送りにして、予算を削減できないか?予算を削減する代わりに未開拓の収入源を発掘できないか?など
* W: 今の分野で選択肢が広げられなければ、似たような別の分野に選択肢を求める 1778
* 選択肢の広げ方まとめ 1881
    * 選択肢の消去テスト
    * マルチトラッキング
    * 自分と同じ問題を解決している人を見つける(組織の内部、競合やベストプラクティス、類似の分野)
* R: 正しい意思決定をするには、反対意見を求める勇気が必要 1963 ☆
* R: その選択肢が駄目な理由ではなく、その選択肢が有効である条件は?という質問で仮説検証する 2090
* R: 同僚の言動がどんなに不愉快でも、善意でそうしていると仮定して意見を受け止め、耳を傾ける 2268
* R: 外部の視点を参考にする。自分と同じ状況では一般的にどのようなことが起こっているかを参考にする。レビュー、平均値、確率など基準値を考える。専門家に過去のことを聞く。 2776
    * R: それだけでなく現場に言って一次情報を受け取りニュアンスを知る
* R: 大きな決断をする前にはちょっとだけやってみる、ウーチングする。プロトタイピング的なもの 2837
    * 小さく始める、プロトタイピングする、実験する
* 確証バイアスに打ち勝つ3つの方法まとめ 3144
* A: この決断を10分後、10ヶ月後、10年後にそれぞれどう思うか考える 3281
* 単純接触効果と損失回避が紐付くと強力な現状維持バイアスがかかり、意思決定を阻害する。これにより現状をそのままにしてしまう 3410
* A: 親友が同じ状況にいるとしたらなんとアドバイスするか、で行き詰まりを回避 3523
* A: 核となる優先事項、つまり価値観を明らかにして、それに従うかを問い続ける。優先度以外を諦める 3915
* P: 未来を幅で捉え、最高の結果と最悪の結果の両方を考えておくことで、予測精度が上がる 4424
* P: 「次の条件を満たしたら行動を取る」のようなアラームで意思決定のタイミングにきづくきっかけを 4597
    * 一般の人々の10%が〇〇に不満を持っているというデータが出た時
* 集団の意思決定の改善まとめ 4859
    * 選択肢をもう一つ探す
    * 同じ問題を解決した人を探す
    * この選択肢が正解である条件はと問う
    * 小さく始める
    * 優先事項を明確化する
    * アラームをセットする
* 手続き的公正は意思決定に納得感を強める 4937 ☆
* 手続き的構成を感じさせるには、相手の見解を相手より的確に言い直す、意思決定を擁護するのに欠点を指摘する 4953
* マネジャーの自己批判は、不安よりも安心を生む 4970
* 集団の意思決定は公正と思われてなければならない。意見に耳を傾け話し合いをすることは時間はかかるが、実行はスムーズになる 5139

「イシューからはじめよ」再読

最近仕事で「やるべきと思うこと」が溢れてきて良くない傾向になっていたので、「本当にやるべきこと」を見極める方法を知りたく、昔読んだことのある「イシューからはじめよ」を再読した。

良いこと言っていると思いつつ、なぜか自分に落とし込めてない。前も同じ感想を抱いた気がする。なんだろうな、結局この本から自分の納得の行くアクションが抽出できていない。100個問題っぽいものがあったら2~3個しか今の段階で解くべきものはないからそれを見つけろという意見は分かるが、見つけるためのアクションが咀嚼できてない。困った。

【13:30追記】
課題のどれからやるべきかを決める方法を悩んでいたけど最近のISUCONの時のやり方が参考になりそうだと思った。

ISUCONは改善すべきポイントは無数にあるが、実際には一番ボトルネックになっているところを解消しないとスコアは上がらない。前回やったときはまず全体像を眺めてこの辺を改善すべきというリストを作って、その後この中で一番効きそうなものから取り組んでいった。効きそうかどうかはアクセスログやクエリ分析、サーバ負荷状況から推定した。

つまり

  • 課題リストを作る
  • リスト内の比較で重要度を決める
  • 重要度がすぐに分からないところを定量的に分析する

という感じだろうか。

読書ノート

  • 生産性の定義は組織論と同じだな 220
    • 「どれだけのインプットで、どれだけのアウトプットを生み出せたか」
    • 生産性 = アウトプット / インプット = 成果 / 投下した労力・時間
  • 「イシュー度」とは「自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」、「解の質」とは「そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い」。この組み合わせでバリューのある仕事かどうか決まる 256
  • 今取り組むべきタスクはほんの少ししかないというのは、いすこんのボトルネックと近いなと思った
    • 問題かもしれないものが100あったら、本当にやるべきものは2~3個
  • イシューを言葉で表現するときは、主語と動詞を入れ、「WHY」より「WHERE」「WHAT」「HOW」を重視し、比較表現を入れる 523
  • 良いイシューとは、先の方向性に大きく影響をあたえ、深い仮説があり、答えを出せるもの 545
  • 新しい構造でイシューをとらえる 684
    • 共通性の発見、関係性の発見、グルーピングの発見、ルールの発見
  • 仮説を立てるためにはユーザーに会うなど一次情報の収集にこだわる。書籍など二次情報は一面的にしか情報がない 752
  • イシューが見つからない時のアプローチ。変数を削る、視覚化する、最終形からたどる、so whatを繰り返す、極端な事例を考える 856
  • 組織なら目指すべき姿とギャップを考えるとよさそうと思った 895
  • だから何?を繰り返し、イシューの曖昧さをなくす 934
  • サブイシューを洗い出すときは何がわかれば意思決定ができるかの視点で見る。これはKPI分解で施策検討ができるようにするというのと話が同じと思った。 1150
  • 分析は、どんな分析結果が欲しいのかを起点に考える。データをただ眺めるのではダメ。 1327
  • 分析とは比較であると考える。たしかにサービスの戦略を考える時も、他と比べて何が弱いかとか、どの数値が意図せず低いかみたいなの考えた 1363
  • 分析をしたいときは先に問いを立てようと思った
  • 比較には、比較、構成、変化という三種類しかない 1377

ストレングス・ファインダーをやった

自分の強みを改めて知りたいなと思ってやってみた。


強みトップ5は次のものになった。

  • 1. 個別化: 個別化という資質を持つ人は、一人一人が持つユニークな個性に興味をひかれます。異なるタイプの人たちの集団をまとめ、生産性の高いチームを作ることに長けています。
  • 2. 学習欲: 学習欲という資質を持つ人は、学習意欲が旺盛で、常に向上を望んでいます。特に結果よりも学習すること自体に意義を見出します。
  • 3. 分析思考: 分析思考という資質を持つ人は、物事の理由と原因を追求します。状況に影響を与える可能性のあるすべての要素を考慮に入れる能力を備えています。
  • 4. 内省: 内省という資質を持つ人は、頭脳活動に多くの時間を費やします。内省的で、自分の頭の中で考えるのが好きで、知的な討論が好きです。
  • 5. 規律性: 規律性という資質を持つ人は、日課や秩序正しい計画に従うことを好みます。世界は自分が作った秩序の中に存在します。

いろいろ読んでみて強みを自分の言葉にまとめ直すと

  • 人の良いところを見つけられる。その人にあったタスクを割り当てたり、その人に合ったやり方を提案できる。
    • タスク差配やメンタリングは好きなので役立ってると感じる
  • 考えることが好き。学習が好き。特に書籍を参考にする。何かを始める前に時間をかけて準備をし、自分の中で納得したい。
    • 新しいことを始める時スタートダッシュが遅いが気づいたら自分の中でかなり体系化できているのは、このあたりの強みが活かされていそう。
  • 自分の中で緻密に計画を立てたい。やったことは標準化して再現可能にできるようにしたい。
    • 計画立てないと不安になるし、計画によってうまくやってきた気はする
    • また自分の通ったところはその後は誰でもできるように整備されているので、この辺の強み活かされていそう


なぜかあまり深く考えなくともうまくできるなと思っていたところが実際に強みとして言語化されるのが面白かった。より活かせるようにしていきたい。