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クラスター株式会社のソフトウェアエンジニアです。エンジニアリングや読書などについて書いています。

歴史文学「HHhH」

歴史文学でもたまには読もうと思い、「HHhH」という本を読んだ。

この本は第二次世界大戦中のドイツ占領下におけるプラハや、ナチの中で重要なポジションを担いプラハの統治を行っていたハイドリヒ、そしてハイドリヒの暗殺計画に携わったクビシュとガブチークについて書かれた歴史文学。

歴史文学と聞いていたので、最初は小説のつもりで読んでいた。だけれどたちまち僕はどういう構造になっているのか掴めなくなった。例えばこの本の中に書かれている「僕」というのは誰なのか。「僕」の視点になったり、その状況下のプラハの情景に変わったり、ころころ場面が変わるのはなんなのか。

いろいろ見てみると、いくつかの発見があり、ようやくどういう本なのかわかってくる。この本は歴史について創作で書くことをよしとせず、残っている資料を元にしか書かないという制約をかけていること。「僕」というのは著者本人であり、小説を書くための調査までも本の中に組み込まれていること。このあたりが掴めてきてから、こんな独創的な小説というのがあるのかと感じた。



独創的であり、正直非常に難しくはあるのだけれど、なぜ独創的であるかがわかってきてからはかなり楽しんで読むことができた。ただそれでも当時の状況について詳しくなかったため、ネットで当時の状況を調べながら読むという読み方になった。こんな読み方をしたのもこれまであまりないと思う。例えばラインハルト=ハイドリヒ略伝のような情報を先に読んだりした。そういう感じに読んだことにより、プラハにおけるナチの位置付けやハイドリヒの性格、暗殺計画である「類人猿計画」がどのように進んだかを感じることができた。



僕は以前プラハを訪れたことがある。その時は現地の友達に案内してもらった。現地の友達は、いろいろな話をしてくれたし、いろいろな場所を紹介してくれた。その中で、ちょっと苦い顔をしながらやっぱりドイツは嫌いと話していたことや、すこし誇らしげな顔でこの教会はチェコの英雄が立てこもって銃撃戦をしたんだよと話していたことが印象に残っている。

この時の僕は戦時下のチェコプラハの状況をよく知らなかったので、正直このような顔になるコンテキストが全く分からなかった。でも今さらながら、「HHhH」で描かれている戦時下の状況や、ハイドリヒを暗殺し立てこもった教会がその教会であると思い出したことによって、なるほどそういうコンテキストだったのかということが理解することができた。



こういうふうに文学を読みながらその周辺の情報を調べられたこと、これを読むことによってプラハの旅行を思い出せたこと、その辺も含めて非常に面白い本だったと感じた。これからプラハに行くんだったら読むと面白いだろうし、行った人にとっても面白い。僕ももう一度このコンテキストを理解した状況でプラハに行きたい。



最後に全然関係ないけど、プラハの写真を貼っておく。
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